サドルソープでレザーブーツを丸洗いする方法——RED WING 875のシミ・汚れを落とした全工程

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「レザーブーツを水で洗ってしまって大丈夫なのか」——サドルソープを使う前に、誰もが一度は不安になる点だと思う。結論から言えば、革製品専用の石鹸であるサドルソープなら、手順さえ守ればリムーバーでは落ちない染み込んだ汚れやシミを洗い流せる。ただし丸洗いは革の油分を確実に奪うため、洗った後の栄養補給と乾燥方法が仕上がりを左右する。

本記事では、履き込んでシミが目立ってきたRED WING 875(アイリッシュセッター)を実際にサドルソープで丸洗いし、アイレットの青錆除去・ライトブラウンでの補色・モールドクリーナーでの除菌まで行った全工程を、失敗しやすいポイントとあわせて記録した。色褪せの補色を中心とした通常のメンテナンスについては8131のフルメンテナンス記事にまとめている。

筆者は靴磨きのプロではない。ただ、水を使った丸洗いまで踏み込む機会は多くないので、一人のオーナーによる実践記録として参考になれば幸いだ。

スペック・概要

ブランドRED WING(レッドウィング)
型番875
モデルアイリッシュセッター 6インチ クラシックモック
レザーオロレガシー(オレンジがかったブラウン)
製法グッドイヤーウェルト
ソールトラクショントレッドソール
8875との違い8875は赤みの強いオロラセット・ポーテージ。875は元祖の色味にあたるオロレガシー

メンテナンス前のコンディション

メンテナンス前の全体。オロレガシー特有の明るい色味がくすみ、全体的に汚れが乗っている
メンテナンス前の全体。オロレガシー特有の明るい色味がくすみ、全体的に汚れが乗っている
メンテナンス前の斜め前から。履きジワに汚れが入り込み、部分的にシミが確認できる
メンテナンス前の斜め前から。履きジワに汚れが入り込み、部分的にシミが確認できる
メンテナンス前のバックショット。ヒールカウンターまわりの色ムラと汚れの蓄積
メンテナンス前のバックショット。ヒールカウンターまわりの色ムラと汚れの蓄積
メンテナンス前のつま先。オロレガシーの明るいレザーは汚れとシミが目立ちやすい
メンテナンス前のつま先。オロレガシーの明るいレザーは汚れとシミが目立ちやすい

オロレガシーは明るいタン系のレザーゆえに、汚れとシミが赤茶系の8875より目立つ。今回はブラッシングとリムーバーだけでは落としきれない状態だったため、サドルソープによる丸洗いまで踏み込むことにした。

使用したケア用品

今回使用したケア用品一式。前回の工程に加え、サドルソープとモールドクリーナーを追加した
今回使用したケア用品一式。前回の工程に加え、サドルソープとモールドクリーナーを追加した
製品役割
コロニル 馬毛ブラシホコリ落とし・仕上げブラッシング
サフィール レノマットリムーバー汚れ・古いクリームの除去
M.モゥブレィ リムーバークロスリムーバー塗布用
サフィール サドルソープ丸洗い(今回追加)
コロニル 1909シュプリームクリームデラックス栄養補給・保革
コロニル ポリッシングクロスクリーム塗布・乾拭き
M.モゥブレィ シュークリームジャー(ライトブラウン補色(前回はレッドブラウン)
M.モゥブレィ ペネトレイトブラシ補色クリーム塗布用
コロニル 1909レザーローション仕上げの保湿
M.モゥブレィ グローブクロス最終磨き上げ
M.モゥブレィ モールドクリーナー除菌・消臭(今回追加)

Step 1:馬毛ブラシでブラッシング

まず全体をブラッシングして表面のホコリを落とす。この後の工程で汚れを革に刷り込まないための前処理だ。

Step 2:レノマットリムーバーで汚れを落とす

サフィールのレノマットリムーバーをモゥブレィのリムーバークロスに含ませ、全体を拭き上げる。古いクリームや表面の汚れをここで一度リセットする。オロレガシーは色が明るいぶん、クロスに移る汚れの量がはっきり分かる。

Step 3:サドルソープで丸洗いする

今回はシミが残っていたため、サフィールのサドルソープで丸洗いした。レザーに水を使うことに抵抗を感じる人は多いと思うが、サドルソープは革製品専用の石鹸で、リムーバーでは落ちない染み込んだ汚れや塩吹きを洗い流せる。

スポンジで泡立てて全体を洗い、泡を固く絞った布で拭き取る。丸洗いは汚れと同時に革の油分も確実に奪うため、この後の栄養補給が必須になる。乾燥は直射日光と熱を避け、風通しのよい場所で陰干しする。急いでドライヤーなどで乾かすと革が硬化するので厳禁だ。

Step 4:アイレットまわりの青錆を除去する(今回の追加工程)

アイレット(鳩目)の刻印まわりに青錆が出ていたため、爪楊枝の先で丁寧に掻き出した。真鍮パーツの青錆は、湿気と手の皮脂が金属と反応して発生する。

ここで金属ブラシや金属工具を使うと刻印そのものを削ってしまうので、木製の爪楊枝のように革やパーツより柔らかい素材を選ぶのが要点だ。刻印の溝に沿って軽く動かすだけで、固着した青錆はかなり落ちる。

RED WING 875 アイレット刻印まわりの青錆を爪楊枝で除去した後の状態
青錆を除去した後のアイレット。刻印の溝まで青錆が抜け、真鍮本来の色が見えている

Step 5:1909シュプリームクリームで栄養補給

丸洗いで油分が抜けた状態なので、ここでの栄養補給が今回のメンテナンスの成否を分ける。コロニルの1909シュプリームクリームデラックスをパール粒1個分ずつ薄く伸ばし、浸透を待ってからブラッシングとポリッシングクロスで仕上げた。

乾燥が進んだ革はクリームをよく吸うが、一度に厚塗りすると白濁の原因になる。薄く塗って乾かし、必要なら重ねる。詳しい適量と手順は1909の使い方ガイド、白くなってしまった場合は白濁の対処法にまとめている。

Step 6:シュークリームジャー「ライトブラウン」で補色

補色にはM.モゥブレィのシュークリームジャーを使った。前回の8131(オロラセット)ではレッドブラウンを選んだが、875のオロレガシーは赤みが少ない明るいブラウンなので、今回はライトブラウンを選択している。同じアイリッシュセッターでも、レザーの色によって補色クリームの色は変える必要がある。

ペネトレイトブラシで塗り込むと、ステッチまわりや履きジワの奥まで均一に入る。塗布後はクロスで余分を拭き取り、再度ブラッシングして色を定着させた。補色は一度に濃くせず、薄く重ねるのが失敗しないコツだ。

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感想(2件)

Step 7:レザーローションとグローブクロスで仕上げ

コロニルの1909レザーローションを全体に塗布し、モゥブレィのグローブクロスで磨き上げる。手にはめて使うグローブクロスは力加減の調整がしやすく、広い面を一気に仕上げられる。

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Step 8:モールドクリーナーで除菌・消臭(今回の追加工程)

最後にM.モゥブレィのモールドクリーナーを内側に噴霧した。皮革製品用の防カビ・除去剤で、除菌と消臭を兼ねる。

丸洗いをすると内部にも水分が入るため、乾燥後にカビの発生を抑える処理をしておくと安心だ。ブーツはソックスからの湿気がこもりやすく、シーズンオフの保管前にも有効な工程になる。

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仕上がり

メンテナンス後の全体。丸洗いでシミが抜け、補色によりオロレガシー本来の明るい色味が戻った
メンテナンス後の全体。丸洗いでシミが抜け、補色によりオロレガシー本来の明るい色味が戻った
メンテナンス後の斜め前から。くすみが取れ、レザーに自然な艶が乗っている
メンテナンス後の斜め前から。くすみが取れ、レザーに自然な艶が乗っている
メンテナンス後のバックショット。ヒールまわりの色ムラも解消している
メンテナンス後のバックショット。ヒールまわりの色ムラも解消している
メンテナンス後。履きジワは経年変化として残しつつ、汚れだけが落ちた状態
メンテナンス後。履きジワは経年変化として残しつつ、汚れだけが落ちた状態
メンテナンス後のサイド。ライトブラウンでの補色がオロレガシーと自然に馴染んでいる
メンテナンス後のサイド。ライトブラウンでの補色がオロレガシーと自然に馴染んでいる
メンテナンス完了。丸洗いから補色・除菌まで終え、シミの目立っていた個体が本来のコンディションに戻った
メンテナンス完了。丸洗いから補色・除菌まで終え、シミの目立っていた個体が本来のコンディションに戻った

同アングル比較——メンテナンス前後

左がメンテナンス前、右がメンテナンス後だ。丸洗いによるシミの除去と、ライトブラウンでの補色の効果が確認できる。

RED WING 875 メンテナンス前
メンテナンス前
RED WING 875 メンテナンス後
メンテナンス後
RED WING 875 メンテナンス前
メンテナンス前
RED WING 875 メンテナンス前
メンテナンス前
RED WING 875 メンテナンス前
メンテナンス前
メンテナンス後

まとめ:今回のポイント

  • ✅ リムーバーで落ちないシミにはサドルソープでの丸洗いが有効——ただし油分が抜けるので栄養補給とセットで
  • ✅ 乾燥は陰干し厳守——ドライヤーや直射日光は革の硬化を招く
  • ✅ アイレットの青錆は爪楊枝で除去——金属工具は刻印を削るので使わない
  • ✅ 補色クリームの色はレザーに合わせる——875のオロレガシーはライトブラウン、8875のオロラセットはレッドブラウン
  • ✅ 丸洗い後はモールドクリーナーで除菌——内部の湿気によるカビを予防できる
  • ⚠️ 丸洗いは革への負荷が大きい工程——通常のケアで落ちない汚れがある場合の選択肢と考えたい
  • ⚠️ 筆者は靴磨きのプロではない。一人のオーナーによる実践記録として参考にしてほしい

よくある質問(FAQ)

875と8875はどちらを選ぶべき?

シルエットと製法は同じで、違いはレザーの色味だ。875のオロレガシーはオレンジがかった明るいブラウン、8875のオロラセット・ポーテージは赤みが強い。日本では8875の赤茶が定番だが、875は元祖の色味にあたる。デニムに合わせたときの印象が変わるので、好みで選んで問題ない。

サドルソープで丸洗いしても大丈夫?

革製品専用の石鹸なので、正しい手順を踏めば問題ない。ただし油分が抜けるため、洗った後に必ず栄養クリームで保湿すること。乾燥は陰干しで、熱を加えないこと。この2点を守らないと革が硬くなる。

アイレットの青錆は放置するとどうなる?

真鍮の腐食なので、進行すると周囲のレザーにも緑色が移ることがある。見つけたタイミングで爪楊枝などの柔らかい道具で落としておくのがよい。落とした後は乾拭きして水分と皮脂を残さないこと。

補色クリームの色選びに迷ったら?

迷った場合は色が薄いほうを選ぶか、カラーレス(無色)から試すのが安全だ。濃い色は後から重ねられるが、入りすぎた色は簡単には抜けない。目立たない部分で試してから全体に広げてほしい。

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8875(オロラセット)のフルメンテナンスは8131の記事、デッドストック品のファーストケアは2922の記事で解説している。

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